絵本作家 浜田桂子さん講演会「子どもの心に寄りそって~私の絵本づくり」(大田区立図書館読み聞かせボランティア講演会)
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更新日:2020年4月2日
令和元年11月10日(日曜日)、入新井集会室で、講師に絵本作家の浜田桂子さんをお招きして、読み聞かせボランティア講演会「子どもの心に寄りそって~私の絵本づくり」を開催しました。その様子をお届けします。
絵本は何のためにあるのか?
生まれてうれしい、生きていくってうれしい、大人になるってうれしいという想いを届けるために、絵本はあると考えています。
本は置くだけでは物でしかなく、手に取って表紙を開き、ページをめくり読むことによって、本に命が吹き込まれるのです。本を手渡すこと、その役目がとりわけ児童書では大切で、その活動を日ごろ読み聞かせボランティアなどで担って下さっている方々には感謝しています。
「子どもの心に寄りそう」とは…
子どもは「大人の小型版」ではありません。非常に感覚が鋭く、大人は文章に重きを置きますが子どもは絵を読み取ります。また、忖度がありません。著者や出版社などは関係なく「僕と同じ」「こんなことあるな」という共感で本を楽しみます。
そんな子どもたちの視点での絵本作りを心掛けています。
生まれてきてくれてありがとう、生まれてきたことがうれしいと子どもに伝える
『あやちゃんのうまれたひ』
私は思春期の感受性の鋭い時に両親を病気で亡くし、「人はどれほど祈ろうと死ぬときは死んでしまう」という、命に対する不信感のような気持ちを体験しました。
それが180度変わったのが自分の出産体験です。自分が生まれてきたことのすごさや奇跡に感動し、命は消えるのでなくつながるということを深く自覚しました。そして自分のために記録を残しておきたいと、えんぴつ書きの手製の本を作りました。
友人の紹介から出版社の人に見てもらい、この絵本が誕生しました。この作品は、その後の作家活動の根っことなりました。
大きくなるってうれしい! 子どもは見守られて大きくなる
絵本を作るのに、小さい下書き本を作るそうです。
『まよなかかいぎ』『るすばんかいぎ』
小学3年生の女の子から「どうして家族の絵本が多いのですか?」との質問があって「家族は一番大事な人たちだから」と答えたところ、「私にとっては文房具も大事なので、文房具が主人公の本を作って欲しい」と言われたことがきっかけとなってつくったのが『まよなかかいぎ』です。『るすばんかいぎ』は、『まよなかかいぎ』を読んだ小学生から次は家具の会議でと手紙が来て作りました。
それまで、日常的な人間の子どもが主体の本を作ってきましたが、文房具や家具も子どもにとっては身近な存在であり仲間なのですね。文房具や家具の会議をとおして主人公の成長過程を表現しました。子どもは見守られて大きくなるのです。
平和って素敵なこと!と伝えたい
画像左から、韓国語、中国語、日本語の『へいわってどんなこと?』
『へいわってどんなこと?』
「戦争の悲惨さを語ること」と「平和が素敵なことだと語ること」は、平和を伝える絵本にとって車の両輪だと考えています。
日本の絵本作家4名(注釈)が韓国と中国に呼びかけて3か国12名が集まり、平和をテーマにした本をつくるプロジェクトができました。『へいわってどんなこと?』は、その「日・中・韓平和絵本」シリーズの第一弾です。
(注釈)田島征三さん、田畑精一さん、浜田桂子さん、和歌山静子さん(順不同)
この作品を各地で読みあった子どもたちの感想(ソウル、東日本大震災の被災地など)
- 仲良くしたり、わけあったりしたい、ふわふわことばでみんなをやさしくさせたい。
- 平和っておとなりの人と仲良くすること、いじめがないこと、悪口を言わないこと。
- 人が死んでしまう戦争は絶対なくさないといけない。
- 平和ってダラダラすること。
- 生きていてよかったと思った。生きているって素晴らしいこと。
子どもに本を読むということ
本を読んでもらった記憶は、自分が愛された記憶として残ります。絵本の一場面だけは覚えていたり、読んでもらっていた<空間>として家庭・保育園・図書館などの記憶が残る。自分が大事にされて育ったという記憶は、他人を思いやる気持ちを育てます。
絵本の世界を一緒に楽しみ、本をいっぱい子どもたちと読みあってください。本だけがあってもダメで、読んでくれる人、手渡してくれる人がいることが大切なのです。
絵本を読んでもらうことによって得た「共感する力」は、平和をつくっていく根本になると考えています。
講師紹介 絵本作家 浜田桂子さん
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