障がいのある人に対する 情報保障のためのガイドライン 【第1版】      令和4年3月   発行 障害福祉課  目次 ■はじめに......................................................... 2 ガイドライン策定の意義 ............................................ 2 障がいのある人とは ................................................ 3 障がいのある人への意思疎通支援 .....................................3 ガイドラインの役割と活用 .......................................... 4 ■第1章 障がいの特性に応じた配慮の基本 ........................... 5 視覚障がいのある人 ................................................ 7 聴覚障がい、音声機能障がい、失語症、吃音などのある人 .............. 10 盲ろう者 .......................................................... 14 肢体不自由のある人 ................................................ 17 内部障がいのある人 ................................................ 19 知的障がいのある人 ................................................ 21 発達障がいのある人 ................................................ 23 精神障がいのある人 ................................................ 25 色弱の人 .......................................................... 27 ■第2章 場面ごとの具体的配慮 ..................................... 29 案内・誘導 ........................................................ 29 受付 .............................................................. 32 相談・説明 ........................................................ 34 手続き(書類記入、文書公布・閲覧、金銭収受) ...................... 37 動画作成........................................................... 42 イベント・会議等の開催............................................. 43 緊急時の対応....................................................... 46 ■はじめに ●ガイドライン策定の意義  障がい者が心豊かに社会生活を営むために、自らの意思を明確に伝え、日常生活を送ることは重要なことです。そうしたことから区では、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律について、区民の皆様に分かりやすく啓発するためパンフレットを作成し、様々な機関や事業者へ配布してきました。  また、聴覚障がい者へのICTを活用した遠隔手話通訳サービス、手話通訳者の窓口配置、視覚障がい者への音声版の普及など、意思疎通のための手段の確保に向けた取組みを積極的に推進しています。  しかし、障がいには様々な特性があり、また、意思疎通のための手段や配慮も個々の状況によって異なることから、障がい特性に応じた多様な意思疎通の手段や、障がい特性に対する理解が、区民や事業者の間に十分には浸透していないことが、障がい者にとっての不便や不安を感じる障壁となっています。  その障壁を取り除くためには、障がい者が個々の状況にあった情報の取得や意思疎通のための手段を選択できる環境を整備する必要があります。  令和2年9月「大田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例」を制定しました。  この取組みの?環として、大田区職員が障がいのある人と情報のやりとりをする際にどのような配慮を行うべきか示すため「障がいのある人に対する情報保障のためのガイドライン」を策定します。  「障がい者」ではなく地域を構成する住民の「一人」として積極的に受け止め、身体障がい、知的障がい、精神障がいその他の障がいの特性に応じた多様な意思疎通手段の利用を促進することにより、障がい者が住み慣れた地域で、自分らしくいきいきと安心して暮らすことができる地域共生社会を実現します。   ●障がいのある人とは  障害者基本法では、身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む)その他の心身の機能の障がいがあって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある人のことを障がい者と定義しています。この定義は社会モデルと呼ばれる考え方に基づくもので、障がいのある人が直面する困難の中には、障がいそのものではなく社会の仕組みに起因するものが多くあります。このような困難さ、不便さは、周囲の適切な配慮で取り除くことが必要です。 ●障がいのある人への意思疎通支援  情報通信技術が進展したことで、大勢の人がより簡単に情報を入手し、また発信できるようになりました。しかし、障がいに対する配慮がないと、障がいのある人とない人との間で得られる情報の格差はさらに広がり、情報のやりとりが十分に行えず、意思疎通に支障が生じている状況です。  必要な情報を適切な形で入手することができ、意思表明できる手段があることは、自らで判断し決定するために、誰にとっても必要不可欠なことです。  障がいがあるからと決めつけてコミュニケーションを断つことは、障がいのある人に対する不利益取扱いになり得ます。  令和2年9月30日に施行された「大田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例」においては「障害者の多様な意思疎通手段の利用の促進」を掲げ、課題の解決に継続的に取り組んでいくことを決定しています。 ●ガイドラインの役割と活用  障がいのある人もない人も共に暮らしやすい社会を築くには、情報のやりとりを行う際に、障がいの有無や内容にかかわらず、実質的に同等の情報が保障されることが求められます。ここでは、この考え方を情報保障としています。  情報保障のためには、障がいのある人の特性に応じた配慮が必要です。  障害者差別解消法では、障がいのある人から求めがあった場合に限って合理的な配慮の提供が義務づけられていますが、どのような配慮ができるかあらかじめ示し、配慮を求めやすいようにすること、また、求めがなくても配慮を行うことが重要です。  大田区では、障がいのある人に対する情報保障のため、このガイドラインを活用・実践していきます。 ■第1章 障がいの特性に応じた配慮の基本  この章では、障がいの特性について記述し、それぞれに求められる基本的な配慮についてまとめています。  障がいの特性を理解し、ひとりひとりの少しの気配りや気遣いが、障がいのある人の直面している困りごとを解決する大きな力になります。まずは、できることから実践していきましょう。 配慮する際のポイント ・情報保障は、障がいのある人の立場に立って考え、情報発信者側が行うことが原則であり、情報を受け取る側に責任を押し付けてはなりません。 ・情報の重要性を認識し、障がいの有無にかかわらず、実質的に同等の情報のやりとりが速やかに行えるよう心がけます。 ・必要な配慮や手段はその人ごとに異なることに留意し、意向を確認して柔軟に対応するよう心がけます。なお、情報発信者側が十分な配慮を行えない場合は、理由を丁寧に説明する必要があります。 ・障がいのある人の人格を尊重し、プライバシーには、最大限配慮します。 ・これまでの慣例、習慣を優先せず、個別の事情に応じて配慮を行うことが前提です。意見が何人集まったかを基準にしてはなりません。?人でも配慮の要望があった場合には検討します。 ・情報をやりとりする際、単?の方法では特定の障がいのある人が情報を利用できないことがあるため、可能な限り複数の方法を用意するよう心がけます。特に、生命・身体や福祉サービスに関する情報、権利の取得又は喪失に関する情報などは、あらかじめ複数の方法を用意するように努めます。 ・在宅で生活している人には家族や身近な支援者の支援や配慮も欠かせません。制度やサービスを広報・周知する際には、家族・支援者・団体等、本人以外にも必要な情報が伝わるよう配慮します。 ・本人の意思で物事を決めること(自己決定)を意識します。分からない、伝わらないと決めつけず、本人に適切な方法で伝わるよう心がけます。 ●視覚障がいのある人  視覚障がいは、何らかの原因により、視力、視野など、「見る」機能についての障がいです。全く見えない場合と見えづらい場合があり、人によって見え方は様々です。 ・全盲(全く見えない) ・細部がよくわからない、ぼやける ・視野障がい(見える範囲が狭い)……周囲が見えず移動に障がいがあるが手元の文字は見える、文字は見えないが移動は可能である、など ・光覚障がい……暗いところで極端に視力が低下する。あるいは、明るさに過敏になり、光がまぶしく感じる。 主な特性 ・一人で移動することが困難  慣れていない場所では、一人で移動することは困難です。 ・音声を中心に情報を得ている。  目からの情報が得にくいため、音声や手で触ることなどにより情報を入手しています。 ・文字の読み書きが困難  文字を読むことや書類に文字を記入することが難しい人が多いです。 ・自分からの助けを求めることが困難  周囲の状況がわかりづらいので、困っていても援助を求めることが難しい人が多いです。 配慮のポイント ・体に触れず前方から声をかける  周りの状況がわからないため、相手から声をかけられなければ会話が始められないことがあります。また、知っている相手でも声だけでは誰かわからないこともあります。 ・指示語は使わない  「こちら」「あちら」「これ」「それ」などの指示語では「どこか」「何か」わかりません。場所は「30センチ右」「2歩前」など、物は「〇〇の申請書」など具体的に説明します。場合によっては、相手の了解を得た上で、手を添え、物に触れてもらい説明します。 ・同じペースで誘導する  誘導するときは、相手にこちらの肘や肩につかまってもらい、相手のペースに合わせて進みます。 意思疎通手段 ・点字  指先で触れて読む文字で、6つの点の組み合わせで表現されています。  縦3個、横2個の6箇所の点が?つの単位(マス)で、凸状の点の有無の組み合わせで五十音や数字、アルファベット、記号を表しています。  点訳を請け負う団体・事業者があるほか、点訳ソフトと点字プリンタを備えたパソコンで点字文書を作成することもできます。 ・拡大文字  弱視の人が読めるよう、大きなサイズの文字で印刷します。行間、書体、字の太さなどにも配慮が必要です。 ・音声コード  小さな白黒の点の組み合わせで構成される二次元コードで、数百文字の情報が収録できます。印刷物に貼り付けることで、専用の読み取り装置や、音声コードリーダーが搭載された携帯電話、対応アプリをインストールしたスマートフォンを利用してコードを読み取り、収録内容を音声で読み上げさせることができます。 ・スクリーンリーダー  パソコンで利用するソフトで、画面の表示内容や選択状況、ユーザの操作等を音声で読み上げます。スマートフォンでも同様の機能を備えています。また、特にウェブサイトの閲覧・操作を行うための音声ブラウザと呼ばれるソフトもあります。 ・点字ディスプレイ  パソコン画面の表示内容やテキストデータなどを点字で表示する機器です。多数の点の浮き上がりで点字を表示する仕組みで、携帯できるものもあります。 ・代読、代筆  視覚障がいのある人に代わって読み上げること、書くことです。 ●聴覚障がい、音声機能障がい、失語症、吃音などのある人  聴覚障がいは、聴力を中心とする「聞く」ことについての障がいです。  聴覚障がいの状況は人によって異なり、全く聞こえない人や、聞こえにくい人、補聴器なしでも会話が聞き取れる人もいます。生まれながらに障がいがある場合と、聴覚を活用して生活していた人が後天的に聴力を失う場合(中途失聴)とがあり、活用できる能力・手段と必要とされる配慮はその人の生い立ちや環境によっても異なります。  聴覚障がいのある人のうち、手話を言語として日常生活又は社会生活を営んでいる人を「ろう者」といいます。  また、言葉を発する際の障がいとして、音声機能障がい、失語症、吃音などがあります。  音声機能障がいとは、喉頭(のど)や発声筋等の音声を発する器官に障がいがあるため、話し言葉のリズムがスムーズではなかったり、発音や発声がうまくできない障がいがある状態のことです。  例えば、無喉頭、がん等による喉頭の摘出手術、発声筋麻痺などにより音声が出ない場合などがありますが、訓練により食道発声をしたり、人口喉頭を使用したりして会話ができるようになる人もいます。また、肢体不自由の状態にある人の中にも、発語にかかわる運動機能の障がいによって話し方が不明瞭になる人がいます。  失語症は、脳の言語中枢が脳梗塞等の脳血管疾患や頭部外傷などにより損傷されることによって起こる言語障がいです。話すことだけではなく、聞いて理解する、読む、書くなど、言語を使用するすべての活動に障がいが起こりますが、脳の損傷部位や広がりにより、症状や重症度は異なります。複雑な内容や長い文章は理解されにくく、仮名より漢字の方が理解されやすいのが?般的です。言いたい言葉が思い浮かばなかったり、違う言葉を言ってしまったりする場合は、聞き手が選択肢を示したり、「はい・いいえ」で答えられる質問をしたりすると、意思表示が容易になります。また、話し言葉だけに頼らないで、身振りや文字、絵、カレンダーや地図を利用すると、コミュニケーションがとりやすくなります。  吃音とは、話し言葉がなめらかに出ない状態のことです。吃音の症状には、音の繰り返し(連発)、引き伸ばし(伸発)、言葉を出せずに間が空いてしまう(難発・ブロック)などがあります。  吃音の状態には波があり、比較的スムーズに話せるときもあれば、言葉が出にくくなるとき、出なくなるときもあります。他の人から注視・注目されるなどの緊張も影響します。二次障がいとして、社交不安障がいを生じることがあります。 主な特性 ・外見からわかりにくい  外見からは聞えないことがわかりにくいため、挨拶したのに返事をしないなどと誤解されることがあります。 ・視覚を中心に情報を得ている  音や声による情報が得にくく、文字や図などの視覚により情報を入手しています。 ・声に出して話せても聞こえているとは限らない  聴覚障がいのある人の中には、声を出して話せる人もいますが、相手の話は聞こえていない場合もあります。 ・補聴器をつけても会話が通じるとは限らない  補聴器をつけている人もいますが、補聴器で音を大きくしても明瞭に聞こえているとは限らず、相手の口の形を読み取るなど、視覚による情報で話の内容を補っている人も多いです。 ・会話が困難なため、不便さを伝えられない  特に、言語障がいのある場合は、知りたいことを質問できない不便さから、周囲の人に理解されず、日常生活にさほど不自由していないと誤った理解をされることがあります。 配慮のポイント ・コミュニケーションの方法を確認する  聴覚障がいのある人との会話には手話、指文字、筆談、口話、読話などの方法があります。  人によりコミュニケーション方法は異なるので、どのような方法を行えば良いか、本人の意向を確認します。 ・聞き取りにくい場合は確認する  言語障がいのある人への対応は、言葉の一つ一つを聞き分けることが必要です。聞き取れないときは、わかったふりをせず、聞き返したり、紙などに書いてもらい内容を確認します。 意思疎通手段 ・手話  手や指、体の動き、顔の表情を組み合わせて視覚的に表現される独字の文法体系を持つ言語です。特にろう者にとっては、文化を創造し、生きるために不可欠なものとして大切に受け継がれてきた言語です。  五十音、数字、アルファベットなど、音声言語の文字そのものを表現する場合には、手指の形や動きで表現する指文字が使われます。  手話通訳者は、手話と音声言語の両言語間を通訳し、それぞれを使う人の間でのコミュニケーションの橋渡しをします。手話通訳者を介してろう者等と対話をする場合には、対話の相手であるろう者等本人を見て話します。 ・要約筆記  音声で聞き取った話を要約し、紙やパソコンで文字に書き表して聴覚障がいのある人に伝える方法です。個人に対して伝えるノートテイクと、プロジェクタなどを介してパソコン画面で投影する全体投影があります。  対象者が1人などの場合にはノートテイクを行い、対象が不特定多数の場合には、全体投影を行い文字で情報を伝えます。 ・筆談  紙と筆記具や筆談具、タブレット端末などを利用して、互いに文字を書いてコミュニケーションを行う方法です。 ・読話、口話  読話は、話し手の唇の動きや表情から状況を推測して話の内容を読み取る方法です。読話と、訓練により音声で話せるようになる発語を用いてコミュニケーションを行う方法を口話といいます。読話は集中力を必要とするため、極度の精神的疲労を伴い、また確実さにも個人差があります。 ・音声の文字化  音声認識技術を使って会話をリアルタイムで文字化(テキスト)することです。聴覚障がい者向けに、スマートフォン上で音声情報をテキストに表示する無料アプリが実用化されおり、指定の言語にリアルタイムで翻訳します。 ●盲ろう者  盲ろう者とは、視覚と聴覚の両方に障がいのある人のことです。障がいの状態や程度によって様々なタイプに分類され、?般には、以下の4つに分けられます。 @「全盲ろう」 全く見えず、全く聞こえない A「盲難聴」 全く見えず、聞こえにくい B「弱視ろう」 見えにくく、全く聞こえない C「弱視難聴」 見えにくく、聞こえにくい  盲ろう者がそれぞれ使用するコミュニケーション手段は、障がいの発生時期や障がいの状態、活用できる感覚により、情報の取得方法、コミュニケーションの方法は異なるため、それぞれ個別に対応する必要があります。  盲ろう者には、コミュニケーション、外出(移動)、情報収集のいずれにも困難さがあります。社会とのつながりを保ち、娯楽や会話などの楽しみ、外出機会などを確保するためにも、盲ろう者向け通訳・介助員等のサポートが不可欠です。   主な特性と配慮のポイント ・盲ろう者は視覚・聴覚の両方に障がいがあります。各々の障がいのある人に対する配慮と同様の配慮が有効な場合もありますが、下記のように盲ろう者特有のコミュニケーション手段もあることに留意してください。 ・弱視や難聴の場合、適切な配慮や環境があれば視覚や聴覚も活用できます。 ・盲ろう者が情報を得るには、活用可能な感覚に応じて、触手話、弱視手話、指文字、指点字、点字、手のひら書き、音声、筆記、パソコンなどを活用しているため、その人に応じた方法で対応します。 ・盲ろう者が意思を表わす際、音声で話せる人は音声を活用することが多いです。それ以外に、手話や指文字などで意思を表わす人もいます。 ・聴力の残っている盲ろう者に話しかける場合、向かい側からではなく、聴き取りやすい方の耳に向かって真横から話すようにします。 意思疎通手段 ・触手話  相手の手話を盲ろう者が触って読み取る方法です。また、相手が盲ろう者の手を取って手話の形を作って伝える方法もあります。 ・弱視手話  視力の残っている盲ろう者が用います。盲ろう者が読み取れるよう、視力や視野に適した位置や大きさで手話を表現して伝えます。 ・指文字  手指の形で五十音やローマ字で表現します。視覚で読み取る場合と、触って読み取る場合とがあります。 ・指点字  盲ろう者の両手の指(人差し指、中指、薬指)6本を点字の6点に対応させ、通訳者が盲ろう者の指に打って伝えます。 ・点字  その場で点字器や点字タイプライタを使って書いた点字を、盲ろう者が読み取ります。また、パソコンに接続した点字ディスプレイを利用する人もいます。 ・手のひら書き  盲ろう者の手のひらに指で文字を書いて伝える方法です。盲ろう者の指を持ってもう片方の手のひらや机などに書く方法もあります。 ・音声  聴力が残っている場合に、耳や補聴器に向かって音声で話しかけます。 ・筆記  視力が残っている場合に、紙とサインペンなどを利用して、見やすい大きさ、太さ、間隔、コントラストで書いて伝えます。 ・パソコン画面  視力が残っている場合に、筆記の代わりにパソコン画面を利用して伝えます。文字の大きさや色、コントラスト、明るさなどが調節しやすく、手書きよりも早く書けるのが利点です。 ●肢体不自由のある人  肢体不自由とは、四肢(手や足)、体幹などに麻痺や欠損などの障がいがある状態をいいます。  上肢や体幹に機能障がいがあると、細かいものをつかみ握ること、字を書くこと、書類や冊子のページをめくること、小さなボタン、スイッチ、タッチパネル、キーボードやマウスを操作することなどに支障が生じる場合があります。 また、発声に関する器官の麻痺や不随意運動などにより、音声でコミュニケーションを取ることが困難な場合もあります。 主な特性 ・移動に制約のある人もいる  下肢に障がいのある人では、段差や階段、手動ドアなどがあると、一人では進めない方がいます。歩行が不安定で転倒しやすい人もいます。車いすを使用されている人では、高い所には手が届きにくく、床の物は拾いにくいです。 ・文字の記入が困難な人もいる  手に麻痺のある人や脳性まひで不随意運動を伴う人などでは、文字を記入できなかったり、狭いスペースに記入することが困難です。 ・体温調整が困難な人もいる  脊髄を損傷された人では、手足が動かないだけでなく、感覚もなくなり、周囲の温度に応じた体温調整が困難です。 ・話すことが困難な人もいる  脳性まひの人の中には、発語の障がいに加え、顔や手足などが自分の思いとは関係なく動いてしまうため、自分の意思を伝えにくい人もいます。 配慮のポイント ・本人に確認する  どんなサポートが必要なのか、本人に確認するようにします。 ・聞き取りにくい場合は確認する。  聞き取りにくいときは、わかったふりをせず、一語一語確認するようにします。 ・不自由さを理解する  適切なサポートにつなげられるように相手にどのような障がい、不自由があるのかを理解します。 ・車いすの人の視線に合わせる  車いすを使用されている人の場合、立った姿勢で話されると上から見下される感じがして身体的・心理的に負担になるので、少しかがんで同じ目線で話すようにします。  言葉がうまく喋れない人に対して、子どもに対するような接し方をしないようにします。 ●内部障がいのある人  内部障がいとは、肢体不自由以外の体の内部の障がいで、心臓機能、腎臓機能、呼吸器機能、膀胱・直腸機能、小腸機能、HIV による免疫機能、肝臓機能のいずれかの障がいにより日常生活や社会生活に支障がある状態です。 主な特性 ・外見からわかりにくい  外見からはわからないため、電車やバスの優先席に座っても周囲の理解が得られないなど、心理的なストレスを受けやすい状況にあります。 ・疲れやすい  障がいのある臓器だけでなく全身状態が低下しているため、体力がなく、疲れやすい状況にあり、重い荷物を持ったり、長時間立っているなどの身体的負担を伴う行動が制限されます。 ・携帯電話の影響を懸念される人もいる  心臓機能障がいで心臓ペースメーカーを埋め込んでいる人の中には、携帯電話から発せられる電磁波等の影響を受けると誤操作する恐れがあると不安に思う人もいるので、配慮が必要です。 (携帯電話の電波によってペースメーカーが誤作動する恐れはきわめて低いことが総務省から発表されています。) ・タバコの煙が苦しい人もいる  呼吸器障がいのある人では、タバコの煙などが苦しい人もいます。 ・トイレに不自由されている人もいる  膀胱・直腸機能障がいで人口肛門や、人口ぼうこうを使用されている人(オストメイト)は、排泄物を処理できるオストメイト用のトイレが必要です。 配慮のポイント ・負担をかけない対応を心がける  内部障がいのある人は、疲労感がたまり、集中力や根気に欠けるなど、外見からはわかりにくい不便さを抱えていることを理解し、立ち話ではなく、いすを用意し座ってもらうなど、できるだけ負担をかけない対応を心がけます。 ・感染症に注意する  免疫力が低下している人が多いので、風邪などの感染症を飛沫感染や空気感染でうつさないためにマスクをつけたり、他の人が大勢いる中で長時間待たせないなどの配慮をします。 ●知的障がいのある人  知的障がいとは、おおむね18歳までの発達期において脳に障がいが生じ、知的な働きが同年齢の人の平均と比べ遅れていることで、日常生活又は社会生活に支障が生じている状態をいいます。障がいの程度により必要な援助の内容や量は異なります。  知的障がいのある人は、複雑な事柄や抽象的な概念の理解が苦手です。複雑な文章や会話の内容を把握することが不得手なため、説明の方法に配慮する必要があります。ただし、人によって能力は異なり、また練習や訓練によってこれらの障がいをある程度克服している人もいます。知的障がいは個別性が高いため、あらかじめどのような配慮が必要か確認することが望ましいとされます 主な特性 ・複雑な話や抽象的な概念は理解しにくい ・人に尋ねること、自分の意見を言うのが苦手な人もいる ・漢字の読み書きや計算が苦手な人もいる ・ひとつの行動に執着したり、同じ質問を繰り返す人もいる 配慮のポイント ・短い文章で「ゆっくり」「ていねいに」「繰り返し」説明  一度にたくさんのことを言われると混乱するので、短い文章で「ゆっくり」「ていねいに」「繰り返し」説明し、内容が理解されたことを確認しながら対応します。 ・具体的にわかりやすく  案内板や説明資料には、漢字に振り仮名をふるとともに、抽象的な言葉は避け、絵や図を使って具体的にわかりやすく説明します。例えば大きさを伝えるときにも「りんごの大きさ」など具体的に表現します。 ・子ども扱いしない  成人の人の場合は、子ども扱いしないようにします。 ・穏やかな口調で声をかける  社会的なルールを理解しにくいため、時に奇異な行動を起こす人もいますが、いきなり強い調子で声をかけたりせず「どうしましたか?」「何かお手伝いしましょうか?」と穏やかな口調で声をかけます。 意思疎通手段 ・コミュニケーション支援ボード  知的障がいや発達障がいがあり、言葉によるコミュニケーションが難しい人に対して、絵や記号、簡単な図を使って説明や意思表示などのやりとりができるようにしたものがコミュニケーション支援ボードです。  コミュニケーション支援ボードは様々な団体などが作成・提供しています。また、最近ではタブレットなどのアプリでも同様の機能を持つものが開発されています。 ●発達障がいのある人  発達障がいとは、主に脳機能の障がいであり、その症状が通常低年齢(18歳くらいまで)で発現するため、しつけや性格に起因するものとは異なります。発達障がいのある人はコミュニケーションが苦手で、発達障がいの適切な理解が得られずに周囲の不適切な対応が原因で生じる二次障がいによる困難を抱えている場合もあります。  感覚が過敏で苦しむ人もいますが、長所として活用できる場合もあります。 主な特性 ・外見からわかりにくい ・相手の言ったことを繰り返すときは、相手が言っていることが理解できていないことが多い ・遠回しの言い方や曖昧な表現は理解しにくい ・相手の表現、態度やその場の雰囲気を読み取ることが苦手な人もいる ・順序だてて論理的に話すことが苦手な人もいる ・年齢相応の社会性が身に付いていない人もいる ・関心があることばかり一方的に話す人もいる 配慮のポイント ・短い文章で「ゆっくり」「ていねいに」「繰り返し」説明  複雑で遠回しになる言い方は用いず、できるだけ短い言葉や文章で簡潔に説明します。 ・抽象的な表現は用いず、できるだけ具体的に説明  「あそこ」「さっき」など曖昧な言葉や抽象的な表現を避け、できるだけ具体的に説明します。 ・表示はゆっくりと、目で見てわかりやすい情報を利用する  文字や絵、写真など視覚的にわかりやすい情報を利用し説明します。 ・活動の変更をする時は事前に説明  たとえちょっとした変更でも、先の見通しがもてないということは、本人にとって大きな不安となります。 ・パニックの時の対応  場所を移して安全を確認し、落ち着くまで静かに見守ります。 ●精神障がいのある人  精神障がいのある人は、様々な精神疾患により、日常生活や社会生活のしづらさを抱えています。心の敏感さ、繊細さへの配慮が必要です。  適切な治療、服薬と周囲の配慮があれば精神疾患の症状をコントロールできるため、大半の人は地域社会の中で生活しています。 主な特性 ・ストレスに弱く、疲れやすく、コミュニケーションが苦手な人が多い ・外見からはわかりにくく、障がいについて理解されずに孤立している人もいる ・精神障がいに対する社会の無理解等から、病気のことを他人に知られたくないと思っている人も多い ・周囲の言動を被害的に受け止め、恐怖感を持ってしまう人もいる ・学生時代の発病や長期入院のために社会生活に慣れていない人もいる ・気が動転して声の大きさの調整が適切にできない場合もある ・認知面の障がいのために、何度も同じ質問を繰り返したり、つじつまの合わないことを一方的に話す人もいる 配慮のポイント ・「ゆっくり」「ていねいに」「繰り返し」説明  会話をするときは、相手が理解できるまで、「ゆっくり」「ていねいに」「繰り返し」話します。 ・不安を感じさせないような穏やかな対応  相手に不安を感じさせないように、落ち着いて穏やかな応対やコミュニケーションを心がけます。 ・精神障がいへの正しい知識の習得  精神障がいの間違った知識や思い込みによる偏見をなくし、正しい知識を取得します。 ・対応場所の変更  窓口等で不安定になってしまった人に対して、場合によっては、気持ちを落ち着かせるために、別室を用意します。 ●色弱の人  パソコンやスマートフォンの普及、印刷技術の進歩によって、私たちの社会では「色」を利用することでより豊富な情報を扱うことができるようになりました。しかし、色の感じ方は人それぞれに違いがあります。特定の色の組み合わせが見分けづらい「色弱」は、障がいとしては扱われないことが多いものの、色の見え方が異なる少数派の人が社会?活の中で不便を感じるという点では、障がいのある人への配慮と同様の対応が必要な場合があります。  なお、色弱であっても色の見分けがまったくつかない人はごくわずかであり、大半の人は適切な配慮によって色による情報を利用することができます。 カラーバリアフリー  2色以上の色を使うときや写真などの上に文字をのせるとき、色弱の人も含めより多くの人にとって見分けやすい色づかいを行い、その上で形や塗り分け、文字などを併用することで、読めない、使いづらい、分かりづらいといった状態を解消し、できるだけ多くの人に情報が正確に伝わるようあらかじめ配慮する取組のことをカラーバリアフリーと呼びます。主なポイントとして下記の3点があります。 1 できるだけ多くの人に見分けやすい配色を選びます ・色の濃淡、明暗の差をつけます  背景と文字の色を明暗や濃淡が対照的な組み合わせにします。  彩度や明度が同程度の色の組み合わせは、見分けづらい人がいます。 ・色を変えます  彩度の高い色と低い色、明るい色と暗い色を組み合わせると見分けやすいです。  印刷、塗装デザインなどで具体的な色の組み合わせを考える際には、研究者、NPO法人、塗料メーカ業界団体、インキメーカ等で構成される委員会が制作した「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット ガイドブック」が公開されているため利用できます。 https://jfly.iam.u-tokyo.ac.jp/colorset/ (カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット制作委員会) 2 色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにします ・文字や線を太くすると色の違いが分かりやすくなります ・色のほかに形も変えて表現します ・グラフなどの塗り分けに模様をつけます 3 色の名前などを用いたコミュニケーションを可能にします ・色の名前を併記します ・窓口に備え付けの手続用紙を色分けしてある場合など、色の名前を用いてやりとりされる可能性があるものに、色の名前を記載すると分かりやすくなります ・色以外の情報も併記します ・案内図や路線図、グラフなどで多くの色を使っている場合には、名称そのものも併記すると分かりやすくなります ■第2章 場面ごとの具体的配慮  この章では、主に区役所の窓口での具体的な場面における、障がいのある人の困り事を記述し、それに対する配慮についてまとめています。 ●案内・誘導  来庁時に目的の窓口に行くまでに困ることとして、次のようなことが挙げられます。 〇視覚障がいのある人 ・目的の窓口がどこにあるのかわかりづらい。 ・初めて来庁する場合、誘導用ブロックなどがあっても、それがどこにつながっているかわからず、目的の窓口まで行きにくい。 ・「何番の窓口に行ってください」と言われても、窓口番号の表示が見えないなど、言われた窓口がどこなのかわからない。 〇聴覚障がいのある人 ・目的の窓口はどこか尋ねたくても、音声による説明がわかりづらいため、質問しにくい。 〇肢体不自由のある人 ・手動の扉を開けづらい。 ・十分なスペースがないと移動しにくい。 ・障がい者用駐車場に障がいの無い利用者が駐車していて利用できない。 〇精神障がいのある人 ・初めての場所で、初対面の人に話をすることに慣れていないため、本人は非常に緊張してしまう。 ・いつも他人に見られているように感じていることもあり、自分から声かけすることは苦手。職員が声かけをせず様子だけ見ていると、じろじろ見られていると意識してしまい、一層戸惑ってしまう。 ・慣れない名称や用語が並んでいると、さらに緊張し、混乱して、来庁の目的や用件すら話せなくなってしまう。 案内 共通的な配慮 ・困っているような人を見かけたら、「ご用件は伺っていますか?」「何かお手伝いすることはありますか?」と積極的に優しく声をかけます。 ・声かけは、介助者ではなく、できる限り直接本人に対して行います。 ・こちらの説明に対する理解が困難な人には、急かしたりせず「明確に」「ゆっくり」「ていねいに」「繰り返し」説明します。 ・ドアの開閉が困難な人には、開閉を手伝います。 ・案内板は、認知しやすい色で、大きな文字の表記を行うようにします。 ・障がい者用駐車場には障がい者用駐車場とわかるよう大きく表示し、目的外の利用がされないよう注意を促します。一方、障がい種別や本人の事情によっては障がい者駐車場を必要とされない場合もあるので、「障がいのある人=障がい者駐車場に駐車する」という固定観念を持たず、本人の希望や状況に応じ柔軟に対応します。 障がい種別の配慮 〇視覚障がいのある人 ・職員であること及び名前を名乗った上で、どの窓口に行こうとしているのか確認し、必要に応じ誘導を行います。 〇聴覚障がいのある人 ・お互いが可能なコミュニケーションの方法を確認の上、行き先(用件)を尋ね、案内します。 誘導 共通的な配慮 ・誘導が必要かどうか、直接本人に尋ねます。 ・誘導用ブロック上はもとより、廊下等の歩行空間には、通行に支障をきたす物を置かないようにします。誘導用ブロックの上で立ち止まる人も多いので、歩行の邪魔にならないよう他の利用者にも配慮を促します。 ・雨天時に濡れた床で滑らないよう、濡れた床面は早めに拭き取ります。 ・施設管理面においては、車いすでも移動できるよう段差のない十分な移動スペースの確保に努めます。また、車いすや補助器具、緊急時に使用するAEDなどの定期的な点検をし、利用する際に不備がないようにします。 ・目的の窓口を容易に見つけることができるようなわかりやすい案内表示にするように努めます。 障がい種別の配慮 〇視覚障がいのある人 ・移動を介助する場合は、その人との背の高さの関係で肘、肩または手首を軽く持ってもらい、誘導する側が半歩先に立って歩きます。階段や段差の手前では「上りです」「下りです」と声をかけます。 〇肢体不自由のある人 ・車いす使用の人にとって、車いすは身体の一部のように感じているので、勝手に車いすを押したりせず、誘導の介助を希望されるかどうか、必ず、本人の意向を確認してから誘導介助を行います。 ●受付  受付での困ることとして、次のようなことが挙げられます。 〇視覚障がいのある人 ・順番を待つ方法(並ぶ・番号札を取る等)がわからない。 ・「次の方」と呼ばれても、自分の前に何人並んでいるかわからない等、自分が呼ばれたことに気づかない。 〇聴覚障がいのある人 ・名前を呼ばれても気づかない。 〇肢体不自由のある人 ・車いすを使用している場合、カウンターが高いと話しづらく、カウンター上の書類も見づらい。 共通的な配慮 ・困っているような人を見かけたら職員から積極的に優しく声をかけます。 ・声かけは、介助者ではなくできる限り直接本人に対して行います。 ・安心でき、リラックスして話せる雰囲気を作ります。また、本人の話は余裕を持ってよく聞き、応対する職員の一方的な判断で結論を導かないよう配慮します。 ・相手の年齢に応じた言葉を使って話します。 ・同伴している介助者の参加を求める場合は、必ず本人の同意を得た上で、介助者を参加させます。 ・介助者が参加した場合も、必ず本人に要点や意思を確認してください。 ・同伴者がいても、申請や手続きに来ているのは本人ですから、本人への確認をしておくことが大切です。 障がい種別の配慮 〇視覚障がいのある人 ・窓口で待つ必要がある場合は、おおよその待ち時間を伝え、順番が来たら名前を呼んで声をかけて知らせます。 ・最初に対応した職員と呼び出しを行う職員が異なる場合は、呼び出し方法についてきちんと引き継ぎを行います。 〇聴覚障がいのある人 ・呼び出しの音声が聞こえない人には、予めどのような方法で知らせるか説明して、不安のないようにします。 ・最初に対応した職員と呼び出しを行う職員が異なる場合は、呼び出し方法についてきちんと引き継ぎを行います。 〇肢体不自由のある人 ・車いす使用の人には、少しかがんで目線が合う高さで対応します。 ・窓口には、車いすの入るスペースのカウンターを配置するようにします。 ●相談・説明  相談や説明を受ける際に困ることとして、次のようなことが挙げられます。 〇視覚障がいのある人 ・抽象的な指示語(これ、それ、あれ等)では、わからない。 〇聴覚障がいのある人 ・手話が通じず、筆談を申し出ても戸惑う人が多い。 ・後で問い合わせしたくても、電話ではできない。 ・口話で説明を求めた時、書類を見ながら説明するため口の動きが見えない。 〇知的障がいのある人 ・複雑な会話や文章は理解しづらい。 〇精神障がいのある人 ・緊張するとうまく話せなくなることがある。 ・一度に多くのことを説明されると理解しづらい。 共通的な配慮 ・相手の話をよく聞き、来庁(来所)目的を的確に把握します。 ・話が的確に伝わるように、「明確に」「ゆっくり」「ていねいに」「わかりやすく」「具体的な言葉で」話します。また、相手の様子を見て、よりわかりやすい言葉に言いかえる工夫をします。 ・障がい種別に関わりなく、相手の話をよく聞き、安心して話ができる信頼関係をつくります。 ・相談内容が的確に把握できない場合には、必要に応じて複数の職員で対応します。 ・障がい特性に応じた方法で説明できるよう、予め説明資料等の準備をしておきます。 ・ポイントは明確に、文章は短く、専門的な用語でなく一般的なわかりやすい言葉で説明します。 ・配布する資料などの問い合わせ先は、電話番号だけでなく、FAX番号、メールアドレスを明記します。 ・「何をしたいのでしょうか?」という聞き方よりも、「〇〇をしたいのでしょうか、それとも△△をしたいのでしょうか?」と選択肢を挙げて具体的に聞く方が答えやすくなります。 ・強い話し方で聞いたり、相手を咎めるような尋ね方は避けます。 ・理解したかどうか、用件を言葉で言ってもらいます。 ・要点を繰り返したり、相手の表情や会話の内容に注意を払ったりして、話を理解しているかどうか、確かめながら話します。 障がい種別の配慮 〇視覚障がいのある人 ・担当者は名前を名乗った上で、伝えたい内容を具体的な言葉でわかりやすく説明します。一時、席を離れる際や新たに対応する職員が加わるような場合には、その旨を伝えます。拡大文字の文書を希望される人には、説明資料等を拡大コピーしたものを渡して説明します。 〇聴覚障がいのある人 ・お互いに可能なコミュニケーション方法を確認して話します。筆談を求められた場合には、面倒がらずに応対します。また、問い合わせはファックス、メールなどでもできるよう連絡先を伝えます。 ・わかりやすい場所に「耳マーク」を掲示し、聴覚障がいのある人が筆談を申し出やすい環境を整えます。 〇知的障がいのある人 ・口頭での説明の理解が難しい人には、できるだけ絵・図・写真などを使用してわかりやすく説明する、説明のポイントをメモ書きして渡すなどの工夫をします。メモ書きの際、必要に応じて、漢字に振り仮名をふります。 ・何度も繰り返し同じ話をする人、つじつまの合わない話をする人には、話を途中で遮らずに、タイミングを見計らって用件を確認し、来庁(来所)目的に沿って応対するようにします。 〇精神障がいのある人 ・口頭での説明の理解が難しい人には、説明のポイントをメモ書きして渡すなどの工夫をします。 ・何度も繰り返し同じ話をする人、つじつまの合わない話をする人には、話を途中で遮らずに、タイミングを見計らって用件を確認し、来庁(来所)目的に沿って応対するようにします。 ●手続き(書類記入、文書公布・閲覧、金銭収受)  窓口での手続きの際に困ることとして、次のようなことが挙げられます。 〇視覚障がいのある人 ・書類が読めず、記入することができない。 ・紙幣の識別に時間がかかる場合がある。 〇聴覚障がいのある人 ・手話が通じず、筆談を申し出ても戸惑う人が多い。 ・後で問い合わせしたくても、電話ではできない。 〇肢体不自由のある人 ・書類に記入するのが困難な人もいる。 ・お金の出し入れが困難な人もいる。 〇知的、精神、発達障がいのある人 ・漢字の読み書きが苦手な人もいる。 ・手続きの仕方が理解しづらい。 ・行政用語等の抽象的な言葉だと理解しづらい。 ・お金の計算が苦手な人もいる。 書類記入 共通的な配慮 ・書類の記入方法については、記入例も含めて文書で大きくわかりやすく表示しておきます。 ・書類の記入の仕方がわからず、困っている人には、職員から積極的に声をかけます。 ・障がいの状況から自筆が困難な場合には、本人の意思を確認して代筆を行い、記入したものを本人に確認してもらいます。 ・書類の氏名欄には振り仮名が書けるようにしてください。 ・看板、案内板、パンフレット、説明書などには、振り仮名をつけ、絵や記号を用いると、更にわかりやすくなります。 ・家族や施設職員その他の関係者の援助が必要になることがありますが、連絡を取る場合は必ず本人の同意を得ます。 ・書類には電話番号欄とともにファックス番号の記入欄を設ける。 ・問い合わせは、ファックス、メール等でもできるよう連絡先を伝える。 ・書類の記入に非常に時間がかかる場合は、ゆっくり書くことができるように、人の目が少ない場所で記入してもらいます。 ・通知や連絡文書は手短に、ポイントを的確に指示する。 障がい種別の配慮 〇視覚障がいのある人 ・読み上げを希望された場合には必要な箇所を読み上げます。読み方としては、まず目次や全体の構成を説明し、その後に必要な箇所を読みます。その際は、要点をまとめるのではなく、原文をそのまま読み上げます。 ・代筆した場合には、その内容を読み上げ、内容を確認してもらいます。ただし、プライバシーに関する事項を読み上げる際は、周囲の人に聞こえないよう留意します。 〇肢体不自由のある人 ・片手で書類を記入する人には、滑りにくいマットや文鎮を置くことで、記入に支障がないようにします。 ・本人からの希望に応じて、代筆を行います。代筆した内容については、本人に確認してもらいます。 〇知的、精神、発達障がいのある人 ・「ゆっくり」「ていねいに」「穏やかに」応対することを基本とし、書類の記入などにあたっては、本人の理解の状況に応じて、記載項目ごとに説明や確認などを行います。 文書交付・閲覧 共通的な配慮 ・本人が希望される場合には、内容をわかりやすく説明します。 障がい種別の配慮 〇視覚障がいのある人 ・要望があれば、文書を読み上げます。 〇肢体不自由のある人 ・本人からの希望に応じて、交付された文書の確認や必要な文書の閲覧のための手助けを行います。 〇知的障がいのある人 ・希望に応じて、交付する文書に振り仮名をつける、平易な言葉による補足説明をメモ書きにして渡すなどの工夫をします。 金銭収受 障がい種別の配慮 〇視覚障がいのある人 ・紙幣や硬貨を声に出して種別を確認しながら手渡します。 〇聴覚障がいのある人 ・金額はメモや電卓で示します。 〇肢体不自由のある人 ・要望があれば、本人の見える位置で、本人に確認してもらいながら財布からのお金の出し入れを手伝います。 〇知的障がいのある人 ・要望があれば、本人に確認してもらいながら財布からのお金の出し入れを手伝います。 〇その他 何度も同じことを繰り返したり、辻褄の合わないことを言ったりする場合 ・内容の正否に関わらず、まず耳を傾けます。 ・話を聞いた上で「ところで、今日はどういった御用件でいらっしゃったのですか?」あるいは「今日は〇〇の用件でいらしたのですね」と本題の用件に誘導します。 ・どうしても用件がはっきりしない時には、適当に切り上げることはせず「ご家庭に連絡した方がいいですよ」あるいは「あなたのよく知っている人に話を聞いてもらった方がいいでしょう」と誘ってみます。ただし、本人の了解なしに電話などはしません。 幻覚や妄想と思われる話が続く場合 ・内容の正否にこだわらず、まず話に耳を傾けます。 ただし、妄想や幻覚は病気の症状なので「それからどうしました」とか「もっと詳しく」などと促すようなことはしません。また、受け入れ難いこと(例えば誰かを訴えるといった内容)に同意を求めてきても「大変ですね」「誰かに相談しては」と流し、頭から否定したり安易に同意したりしないようにします。 ・話を聞き落ち着く様子が見受けられたら「ところで今日こちらに来られた用件は〇〇ですよね」と話題の転換を図ってみます。 ・用件に入ることが難しいときは「用件がはっきりわかったら、また来てくださいね」と本人に確認して切り上げます。 ・何らかの障がいが疑われても、安易に精神科治療等を勧めることは適当ではありません。「もし困ったことがあれば、相談できるところを紹介しましょうか」くらいにとどめておきます。 ●動画作成  広報放送番組や広報DVD、インターネット経由で提供される動画を視聴する際に困ることとして、次のようなことが挙げられます 〇視覚障がいのある人 ・主音声では場面転換や人物の動作(無言で頷く等)、表情などがわからない。 〇聴覚障がいのある人 ・映像だけでは内容がわからない。 共通的な配慮 ・動画の中で問い合わせ先などを示す場合は、文字や画像、ナレーションの両方で具体的な内容を提供します。 障がい種別の配慮 〇視覚障がいのある人 ・副音声によるナレーションや音声ガイドを付加することが望ましいです。 (すべての動画を対象とするのではなく、用途や場面に応じて必要性の判断をお願いします。) 〇聴覚障がいのある人 ・手話通訳を付加したり、字幕等文字情報の提供を行うことが望ましいです。 ●イベント・会議等の開催  イベント・会議等に参加する際に困ることとして、次のようなことが挙げられます。 〇視覚障がいのある人 ・会場までの経路がわからない。 〇聴覚障がいのある人 ・音声による説明だけではわからない。 〇肢体不自由のある人 ・車いすを使用している場合、受付が高いと書類の記入もしづらい。 〇知的、発達、精神障がいのある人 ・パンフレットや書類の内容の理解が難しい。 ・初めての場所に緊張して不安定になってしまう。 開催準備 共通的な配慮 ・参加者が特定されている場合は、必要な配慮について事前に確認するようにします。 ・発表等がある場合は、資料の事前配布等を行い、スムーズに行えるようにします。 ・中には疲れやすい人もいるため、会議等の進行速度に留意し、おおむね1時間ごとに休憩を設けます。 障がい種別の配慮 〇視覚障がいのある人 ・要望に応じて、資料に点字や拡大文字、音声コードを貼り付け、音声で読みあげるためのテキストデータを提供します。 〇聴覚障がいのある人 ・事前に参加申込書等がある場合は、手話通訳者、要約筆記者の希望の有無を確認します。 ・必要に応じて磁気ループやオーバーヘッドプロジェクター(OHP)を用意するようにします。 ※磁気ループ…補聴器あるいは磁気ループ専用補聴器に直接音声を送り込むために使用する機器  オーバーヘッドプロジェクター(OHP)…手書き要約筆記(全体投影)に使用する機器 〇知的、発達、精神障がいのある人 ・不安定になってしまった人に対して、気持ちを落ち着かせるため、個室を用意します。 ・看板、案内板、パンフレットなどには、振り仮名をつけ、絵や記号を用いるとさらにわかりやすいです。 席配置 障がい種別の配慮 〇視覚障がいのある人 ・人によって見え方は様々であるため、スクリーン等を利用する際は席の位置に配慮します。 ・場内を暗くすることで視力が大幅に低下する人は、手元で利用できる照明を持参するよう事前に案内をするか、主催者側で用意するようにします。 〇聴覚障がいのある人 ・口話を利用する人等がいるため、席の位置に配慮します。 ・手話通訳者が見やすいよう立つ位置、高さに気をつけます。 ・参加者が個別で手話通訳者等を利用する場合は、通訳者の座席も用意します。 ●緊急時の対応  火災や地震など庁舎から避難する必要が生じた場合に困ることとして、次のようなことが挙げられます。 〇視覚障がいのある人 ・どこが避難口かがわからない。 〇聴覚障がいのある人 ・緊急時のアナウンスが聞こえない。 〇肢体不自由のある人 ・非常階段を自力で下りられない等、避難口までの移動が難しい。 〇知的障がいのある人 ・驚いて動けなくなったり、極度に興奮したりする場合がある。 対応事項 ・緊急時には、障がいの特性に応じたコミュニケーション方法により、情報を的確に伝達し、迅速に避難誘導します。 ・日常的な避難訓練において、障がいのある人の視点を盛り込むよう努め、緊急時に自力での移動が困難な人の避難に支障をきたさないようにします。 1