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防災・安全対策特別委員会中間報告

ページ番号:807866754

更新日:2007年3月8日

平成19年3月9日

1 調査事件
   防災対策について
   危機管理対策について
   地域防犯対策について

2 中間報告
 当委員会では、大地震、風水害などの自然災害から区民の生命、財産を守るため、また多様化・複雑化する危機に対し、区民が安全・安心に暮らせるまちづくりを実現するために、様々な方向から調査研究を行った。昨年5月に中間報告を行っているので、主に6月以降の調査・研究について報告する。
 その経過は以下のとおりである。
   
(1)防災意識を高めるために
 昨年は、これまでわが国においては、比較的経験の少ない内陸県(海に接していない県)での水害や大規模な竜巻などにより、多くの死者や負傷者が出る惨事を引き起こした一年であった。7月の大雨による長野県岡谷市の土石流災害に続き、8月には台風7号、11号による集中豪雨が、鹿児島県を中心とした九州南部に甚大な被害をもたらした。また、宮崎県延岡市や北海道佐呂間町で竜巻による被害があり、自然災害の恐ろしさを再認識した。
 区は災害に強いまちづくりを推進するとともに、区民の防災に対する意識を高めるため、地域の防災行動力の向上と防災対策の充実をこれまで以上に展開していかなければならない。

ア 大田区総合防災訓練・大田区災害対策本部運営訓練
 総合防災訓練については、今年度から実施方法を変更し、地域防災力の強化を目指して、初動期の発災対応型の訓練を中心に、各地域行政センターが主管となり実施した。実施日も9月1日の防災の日に限定せず、今年度は、各地域行政センターにおいて、6月から11月にかけて実施し、延べ4,478人が参加した。一時集合場所での消火器等訓練、学校での避難所の開設・運営、情報連絡訓練、拡大訓練地域として、関係機関、民間協力団体と連携した「まちなか訓練」、担架や車いすなどを、実際に組み立て、使用するといった実際的な訓練など地域の実情に応じて工夫を凝らし、地域住民が主体となった体験型のものとなった。
 また、9月1日の防災の日には、職員訓練としての本部運営訓練を実施した。東京湾北部地震を想定し、迅速かつ的確に対応するための対応の検討、報告、業務計画の再確認、さらには消防、警察が加わり想定される活動内容の検証が行われた。
 このような訓練を一つの契機として家庭内の安全を今一度確認し、近隣住民との連携を深めるとともに、災害が発生したときにも冷静な行動がとれるよう、普段の訓練と防災に対する意識の向上が求められている。
 委員からは、より多くの方が参加できるために体制の整備、周知方法の工夫に努めていく必要があるとの意見が出された。

イ 合同水防演習
 水防活動力の向上と水災による被害を軽減するために、消防署等の関係機関と協力して、5月28日合同水防演習を実施した。地域の方々、自治会・町会の方々を中心に総勢で342名の参加があった。今年度は都市型水害を想定し、ビル出入口や家屋の実践的な浸水防止工法を地域住民、災害のボランティアとともに実施した。
 委員からは、さらに参加者にわかりやすいように、工法を見せる過程などを工夫するよう意見が出された。
  
ウ 風水害等による区内の被害状況
 当委員会では、集中豪雨や台風による降雨量、被害状況、区の活動状況等が報告された。
 5月24日は大雨が降り、午前中に23区西部に雷注意報が発表され、その後、大雨洪水注意報、夕方には大雨洪水警報の発表があった。練馬区や市部を中心に集中的な雨が降ったことによって、都内では床下浸水や道路冠水による車両水没などの災害が発生した。大田区では、馬込地区で総降雨量59mmを観測した。区の水防体制等については、41名からなる水防の監視態勢を設置し、夜間連絡体制等の対策にあたった。被害状況として、民家での半地下車庫のポンプ故障による浸水が1件あり、消防で排水をして、復旧した。
 また10月7日には、多摩川河口付近で浸水が発生した。当日は低気圧前線と大潮が重なり、異常潮位となり多摩川の水位が上昇した。しかし、羽田水門については管理者である国土交通省が水門閉鎖を行わなかったため、午後4時20分ごろ川の水が船溜りを超えて、近隣の住宅玄関先等の冠水が発生し、事業所の浸水が1件あった。また、六郷水門では隣接する南六郷緑地に水が上がり、付近道路に一部水が流れ出たがL字側溝で排水したので、幸いにも民地等への浸水被害はなかった。その後、区と国土交通省で対策会議を開催し、今後の対策として、適切、迅速な水門操作及び管理方法の精査並びに情報収集の強化、連絡体制の充実を図った。
 委員からは、この事件を機に関係機関との機敏な対応を今後も精力的に取り組んでいくよう意見が出された。
 そのほかいくつかの台風が通過し、水防監視体制、夜間連絡体制が敷かれたが、被害等はみられなかった。これらの経験を教訓とし、対策を講じておくことにより、複雑・多様化する災害態様への適切な対応が可能となる。今後も態勢の充実と迅速な対処の徹底が望まれる。

エ 耐震診断・耐震改修助成制度について
 区は地震に強い、安全で安心して暮らせるまちづくりを目指し、18年4月から耐震診断・耐震改修工事の助成事業を実施した。さらに12月には、区民に便利で使いやすくするために、助成内容を拡充すると報告があった。
 区内全域を対象に用途・構造を問わず、すべての旧耐震建築物を対象とし、無料の木造住宅予備診断、一般診断及び精密診断の一部助成、耐震コンサルタント無料派遣、積算及び図面作成等の改修計画・改修設計の一部助成及び耐震改修工事に関する助成金の一律50万円増額といった耐震化支援制度を構築した。
 委員からは、23区で先頭を切って実施する制度であり、地域住民にも地震に対し、自覚して対策を立てるうえでも積極的なPR活動を進めてほしいという意見が出た。

オ 鳥取県境港市の視察について
 18年10月、大規模地震への対策を調査するため、鳥取県境港市を視察した。平成12年10月、鳥取県西部を震源地とするマグニチュード7.3の地震が発生し、鳥取県境港市では、震度6強を観測した。家屋の倒壊に加え、臨海部の埋立地や干拓地で液状化現象が発生し、流通・港湾・産業施設などに甚大な被害をもたらした。一方で、人的被害は軽度の負傷者が80名程度発生したが死者、行方不明者が無かったのは不幸中の幸いであった。
 視察では、先方より、災害対策本部の設置状況、避難所の開設と食糧の供給、一人暮らし高齢者など被災者への対応、ボランティアの活動、倒壊家屋解体処理事業、復旧対策などについて説明を受けた。実際の体験を踏まえた詳細な説明は、発災時の状況、復旧へ向けた取り組みなど、当時の様子が息を呑むほど鮮烈に伝わり、様々な観点から質疑、意見交換を行うことができた。
 ここ数年、日本各地で地震災害が発生している。また、東京においても大地震がいつ発生してもおかしくないと危惧されている。今回の視察を通じ、災害時における迅速な避難体制の確立、関係団体との相互連携、災害意識の啓発、自主防災組織の育成強化などの重要性について、改めて認識するとともに、視察で得た知識や経験を生かし、区の防災対策に反映させていくことで、より良い施策を区とともに構築していくことが重要であると考える。

(2)危機管理能力、地域防犯意識を向上させるために
 近年の社会経済環境の変化に伴い、犯罪発生件数の増加や児童殺傷事件の頻発化、凶悪犯罪被害の増加など、急速に治安が悪化し、看過できない状況にある。また、家庭におけるガス瞬間湯沸かし器の安全性の問題、東京都港区でのエレベータ事故や埼玉県ふじみ野市におけるプール事故、新潟県五泉市で児童が学校の防火シャッターに挟まれた事故、北海道北見市でのガス漏れ事故など私たちの身近な生活環境における危機に対し、管理者の適切な点検、事故が起きたときへの敏速な対応が今一度求められている。
 区民の生命と財産を守るため、区は危機を未然に予防し、的確に対応できる危機管理能力を向上させる施策を構築し、様々な方面に対し発信していかなければならない。
  
ア 交番機能強化の取組みについて
 6月27日警視庁は、機動性を持たせるために交番の配置の見直しを行い、都内で121、区内では10の交番を廃止すると発表した。これに対し、当委員会委員全員で交番の整理・統合計画の再考を求める意見書案を議案提出し、平成18年第2回臨時会での議決を経て議会の総意として東京都及び警視庁に提出した。
 意見書には、交番の存在が犯罪の発生抑止力、地域の安全の確保に貢献してきたこと、今回の発表により、地域住民の不安が増加していること、警察官又は交番相談員が昼夜を問わず常駐し交番機能を強化するなどの積極的な取組みを求めることなどを記載した。後に、警視庁からは、対象の交番については、警視庁管理の地域安全センターと自治体管理の施設に用途変更して警察官OBを配置するとともに、廃止となる交番に勤務していた警察官を、人口密集地域や犯罪多発地域へ重点配備を図るなど、地域での警ら活動をより強める方向で邁進するとの報告があった。

イ こども緊急連絡システムの拡大について
 今年度より、電子メールによりあらかじめ区に登録した保護者へ緊急連絡情報を配信することで、安全性の向上を図ることを目的とした、こども緊急連絡システムの運用が開始された。 12月には、こどもの安全と安心の一層の確保を図ることを目的として、これまで対象であった区立施設に加え、私立保育園、幼稚園、小学校、中学校、都立養護学校、区外の学校等に通わせている保護者についても対象を拡大した。
 委員からは、配信情報等の創意工夫により、加入登録者の数を着実に増やす努力を、また正確な情報が迅速に保護者へ送信されるよう通信手段の研さんを期待するとの意見がなされた。

ウ 国民保護計画について
 国民保護法に基づき、国民保護計画を策定したとの報告が上げられた。策定の際に、第一に国民保護法等の基本方針に基づくこと、第二に区の地理的な条件等の地域特性を生かすこと、第三に既存の区の地域防災計画を活用し整合性を図ることという三つの方針を掲げた。
 大田区国民保護協議会は5月・8月・11月と開会された。5月の第1回目協議会で諮問し、8月の第2回目協議会で計画案の素案を示すと同時に、区報、ホームページあるいはリーフレットにより、区民及び関係機関の意見集約をし、それを踏まえて11月の第3回目の協議会にて計画原案を示し、そこでの審議を基に、計画案を作成した。その後、東京都知事との協議が整い、先月2月に計画を決定し、今定例議会に報告をするとともに区民に公表をした。
 計画には、国民保護に関する基本方針として基本的人権の尊重、国民の権利利益の迅速な救済、国民の協力等9つの原則を掲げ、避難、救援、そして武力攻撃に伴うところの災害の対処という業務に対し国・都・区がそれぞれ役割を果たすことを明記した。

エ 大規模停電への対応について
 8月14日、旧江戸川でクレーン船が高圧送電線に接触し、首都圏の139万戸に及ぶ大規模な停電事故が生じた。
 区防災課は、情報処理体制を立ち上げ情報収集処理にあたった。防災無線塔により被害箇所を確定し、被害状況の把握に努め、調査を行った。ホームページを使って区民に停電状況を知らせると同時に、2次災害の防止のため、発熱機器、電熱器についての注意の呼びかけも行った。
 大田区では、電力契約件数のうち13%が影響を受けた。4時間以上も停電した地域もあった。
 委員からは、拡大多様化する危機に対し、東京全体、首都圏全体でしっかり考えなければいけない、行政、地域、関係機関が一体となった取り組みを求めるという意見が出された。

オ 鳥取県米子市の視察
 平成18年10月、住民の防犯意識向上という観点から鳥取県米子市で運用している安全・安心ネットワークシステムの視察を行った。担当者より、システムの管理形態、運用現況などの説明がなされた。システムでは、警察・消防・ケーブルテレビ等とネットワークで連携し、市内の防犯情報等を配信することに加え、グループ掲示板を設定し、グループ内で安全・安心情報の閲覧、書き込みを行い、情報の共有化を図ることができる。情報過多により、住民の体感治安を減少させないよう配慮しつつ、市民のコミュニティの醸成と自主防犯活動の活性化を目的としている。委員からは、ネットワーク導入後の効果や学校のグループ登録の運営状況、市内のセキュリティ状況、運用に際しての注意点等、区のシステムを踏まえた闊達な質問が出された。今後の委員会審査のうえで大変参考となる視察となった。

 地震や台風などの自然災害は、被害を最小限にとどめることが肝要である。そのためには、地域住民・行政・関係機関が常に災害に対する意識を継続、向上させ、災害時において的確な対応ができるよう、常日頃より防災対策の推進や実践的な訓練等の積み重ねが重要である。
また、様々な危機管理や地域防犯対策については、関係組織との多方面な角度からの連携を深め、予防対策を講じ、危機の際には、地域の実情に即した迅速、的確な対応が求められている。
 大田区は、区民一人ひとりに防災意識、危機管理意識の大切さを周知し、今後とも安全・安心なまちづくりの実現のため一層の調査・研究を行い、防災行動力の向上と防災対策の充実、危機管理能力の伸展に努めていくことを望む。

 最後に、今後も安全、安心のまちづくりへの取り組みに対して多様な視点から審議、提言を行う必要性を強調し、防災・安全対策特別委員会の中間報告とする。

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